GEISAIブースE(工藤伸一分)
E-001【TAO】
幾何学模様のビル群が屹立する夜景。中心のビルを頂として左右対称に少しずつ低くなっている。体内に溶岩を湛えた休火山、はたまた発熱するCPU基盤か。冷たさの中にも熱を感じる、そんな都市の風景。
E-002【中川晋介】
アースカラーで描かれたメルヘンチックな世界観。銀河鉄道、回転木馬、水車に旧式バス。ロールシャッハテストのように観る者の心を映す、優しい空間。
E-003【國分郁子】
サイケな色調の内臓をモティーフとしたグロテスクさの中に、世界を愛するが故に憎む孤独な悲哀を感じる。
E-004【大石友美】
牧歌的かつ家庭的なテーマを包み込むような淡い筆致が、ホームシックを喚起させる。添えられた詩は、あくまで優しい。
E-005【大上裕未】
植物柄のパッチワークで円形に象られた様々な動物たちの饗宴。マザーアースへの感謝の念がひしひしと伝わってくる。
E-006【Schole】
青く滲む女性の肖像。物憂げな表情のわりに、どこか満足気だ。降り注ぐ光のスコールは、洞窟の底に棲むというまつろわぬ種族にさえも、あくまで平等に慈愛の水分を与えるのだろう。
E-007【松本慶祐】
ポップなタッチのアニマル・キャラだが、皆一様にディープな現代人的プロフを抱えている。それでも懸命に生きようとする彼らは、無慈悲でリアリスティックな背景に馴染もうと、必死に努力しているのだ。
E-008【satoco.】
雲のような曲線の端が、人間の足になっている。花のようにも見える。女性のファッションセンスを分解すると、こんな感じか。空にたゆたう雲のように不定形な女心。髪の毛とパンツだけが本物の毛糸で顔は見えないところが、むしろ大胆にジェンダーを強調する。
E-009【高広夏子】
8歳のみぎりより新聞を作り続けてきた作者。子供ならではの視点が生み出す、意外に鋭い社会性。大人になってからはコミックエッセイ風。のびやかなヘタうまイラストで綴る日常的な話題に、スロウライフの魅力を感じる。
E-010【Maureen Duncan】
アナログレコードと牙の生えた人々。目が赤く光っているのもいる。ゾンビやドラキュラのようだが、普遍的な服装に身を包む。それは僕ら自身の姿。回らないはずのレコードから心の叫びが聴こえてくる。
E-011【タヤマ ヒロアキ】
ノイズィーな色調の、暗いカタマリ。ギザギザの線にロックを感じる。あくまでオトナ、その実コドモ。そんな「男の夢」。
E-012【松本弘二郎】
しりあがり寿みたいなギャグ漫画的ゆるキャラが、混沌の渦の中でひしめきあう。その表情は皆一様に笑っているが、決して楽しいというわけではなく。恐れ・怒り・悲しみといった感情のカオスを処理できずに「もう笑うしかない」という、呆けた諦め。芥川賞作家・吉村萬壱のデビュー作『クチュクチュバーン』に描かれた類の地獄絵図なのだろう。
E-013【加藤ゆかり】
壷に湛えられたオレンジ色の液体は、3枚いずれの絵にも描かれている。無邪気に遊ぶ子供たち、誰もいない空間、禍々しい表情をした大人たち。背景が変われば、意味合いも変わる。おいしいスープ? マグマの噴火口? 人を殺める毒薬? 本当は同じものなのに。
E-014【山本慎一郎】
狂った世界に浮かぶ、写実的な「ニンゲンの眼」そして「ヒトの貌」。私たちが観ているのか、それとも視られているのか。
E-015【原康浩】
みやびやかな和柄を用いて表現されるのは、無骨きわまりないジャンク・テイスト。伝統とテクノロジーがせめぎあう現代日本の見慣れた風景が、ここにもある。
E-016【相澤なほ】
自然は残酷で、だからこそ優しい。ゴシックとメルヘンが調和できる理由は、そういうカラクリ。
E-017【SARA】
青春ラブコメ漫画から飛び出してきたかのような男女と、神話的キャラクター。ジャパニメーションの粋が結集している。
E-018【木浦奈津子/炭田紗季】
①マットでフラットな風景。どこにでもあるようでどこにもない不思議な感覚。②平面に溶け込んだ立体。騙し絵を見せられているような不安感。二人の作品が並ぶことで、少しホッとする。
E-019【清水大】
ダリと黒田硫黄の奇跡的な邂逅。有機的マシンと化した自然のダイナミズムに、人為の全ては呑みこまれてしまう。
E-020【重盛守道】
作者とともにエジプトなど世界中を旅した人形が、写真やフライト・チケットと共に展示されている。これらを同時に知ることによって、人形の付加価値が高められる。人形に込められた一回性のアウラ。
E-021【Ime】
謎の生物たち。母子らしき者や、泣いている者。雨のしずくを思わせる筆致が、観る者を慰める。
E-022【太田由美】
毒々しくとも官能的な水中花に群がる、かわいい人面魚たち。死を操るがゆえ生を司る、悪の華。誰もが一度は魅入られてしまう。
E-023【木塚ゆうき】
都会で暮らす、積み木のような女の子。触ればすぐに壊れてしまうのだけれど、いつの間にか別の形で何事もなかったかのよう。不安定な都市の情景。
E-024【こうぶんこうぞう】
すくすく育つ子供の感性を、伸びやかに描く。どんなに薄汚れた世界であろうとも、子供の笑顔には希望が湛えられている。
E-025【伊藤真以子】
肉食のネコと草食のキリンが共存する。カラフルな気球で運ばれた種子が芽吹く。陽だまりの温もりに感謝したくなる、地球の日曜日。
E-026【三杉レンジ】
外出先で使える「移動式ひきこもりハウス」。純粋培養された子供の自我が、世界を挑発する。目を背けて引きこもっているのは、そっちのほうなんじゃないかと。
E-027【川井絵理子】
今、そこにある「キモカワ」。儚く愛しい、この世の悲哀。
E-028【諸永光】
単なるゴミだらけの庭ではない。それは一人のニンゲンが生きた証。T氏の肖像画、好きだったタバコ、使い古された愛用のペン。「知っている人かもしれない」とも思ったが、多分それは気のせい。
E-029【Charatoons/カーナ】
楽天的なリゾート。ネガティブな要素は微塵もない。一度きりの人生を軽やかにやり過ごす、たったひとつの冴えたやり方。
E-030【有園正俊】
ふとした瞬間に普通の日常が幻想的な異空間に変貌を遂げる。何気ない出来事にさえも感動せざるをえない、魔法の一瞬。
E-031【JOH】
闇に吼える虎。それは男の心の奥深くに潜む野生。スタンダールの『赤と黒』。失われた本能を取り戻せ!
E-032【田中和也】
言われてみれば確かにオンナは爬虫類的だ。恋すれば動き出す変温動物。どんな目にあおうとも、いつかまた生えてくる尻尾。その肌はあくまで繊細なのだけれど。
E-033【石川陽子】
陶器って意外とサイバー。土も鉄も、炎の力で生まれ変わる。まるで火の鳥のように。実用的な利便性を追求すると、美しさをともなうことの不思議さ。
E-034【料冶幸子】
躍動的なダンサーたちを横切る直線。彼らの心のすれ違いや運命的出会いを暗示しているのだろうか。人生の縮図が垣間見える。
E-035【くつなまい】
五臓六腑がカラフルにスパークする時、ソーダ水の泡の如く閃きが弾ける!
E-036【栗田洋介】
フロイトの描く脳内分布図。プリミティブな楽園。
E-037【福島菜菜】
夢は記憶を整理するというが、DNAに組み込まれた太古の歴史まで蘇ってしまうこともあるらしい。性も種も融合した進化のカーニヴァルが、そこに展開する。
E-038【剛之】
たゆたうまどろみの表情が淡い墨に溶け込む。官能は静寂の中で無限の意味を伝える。
E-039【superbubupesi】
他者を拒絶するがあまりヒトとしての体を成さなくなってしまった。けれど今まで以上にダイレクトに感情があふれ出てくる矛盾。それがさらにヒト嫌いを加速させる悪循環。
E-040【川俣知子】
素朴さが郷愁を募らせるけれど、寂しさはわがまま。絡み取れられたら最後、なんてオトナの悪意を尻目に。少女は時を越える。
E-041【角野充】
「押し花」は生きているのか、死んでいるのか。それでは空は? シュレディンガーなら、どう答えてくれるのだろう。
E-042【大山千恵子】
球体の重なりは色によって宇宙や細胞、果実や水泡と変幻自在に姿を変える。この世を司る永遠のイコン。
E-043【本多孝男】
分断された九つの五角形は、立方体から切り出された。それぞれに樹木の枝か針金にも似たデザインが踊る。様々な物理現象を圧縮したクールな「神の視点」に、眩暈がする。
E-044【TAISO】
秋の収穫を喜ぶ農村の民か、はたまたビッグバンで誕生した我々の祖先か。よもや地球の最後という可能性も。始まりも終わりも似たようなもの。
E-045【福田大将】
自身の墓碑を描くことで、集う人々の態度から作者が見えてくる。消しゴムが消し去ったのは仮初の姿だけで、筆の軌跡は消える事がない。ヒトも同じだ。
E-046【ITO YASUHIKO】
和紙の千切り絵でアメリカを描く。より一層その国を裸にすることができる。
E-047【佐藤はなみ】
子供のいたずら書きこそが世界を正確に捉える絶好の技法だと、ピカソは考えた。そこから突きつけられるものは時に辛い現実だけれど、インナーチャイルドはきっと喜んでいるはずだ。
E-048【MIHO+TUBASA】
どうして犬と少年は闘ったのか。なんか知らないが、泣ける。とにかく犬は敗北し、少年の行方は知れない。脱ぎ捨てられた胴着に勝者の誇りはない。どうせ最初からいなかったのだろう。犬も少年も。
E-049【青木正樹】
大きなベニヤ板に描かれた家。アリストテレス風に見れば、それは建築部材のエイドス。夢みるベニヤ板のファインライフ。
E-050【minako】
飛んで逃げることが出来るというのに、鳥がカワイイ必要があるのだろうか。カワイイことに理由なんかなくて、むしろカワイイことが目的なのかもしれない。
E-051【牛saeki】
女の子はオカシで出来ているから、オカシくなくても笑うことが出来る。マネキンのボディやピンクのパンプスだって女の子。男が履いても同じこと。性は後天的に発明される。
E-052【+7a】
揺らぐカタマリに色がないのは、やはり中心点に吸い込まれてしまったのだろう。そのうち私も絵の中に入り込んでいるに違いない。
E-053【寺嶋悠里】
アンニュイな表情とアートの相性がいいのは当然。アートとは気だるい退屈から逃れるテクニックの別名に他ならない。うたかたの音楽や花々とともに、儚い人生が緩やかに流れてゆく。
E-054【石田直之】
迷路ゲームにゴールがなければ売り物にならないが、迷路アートなら話は別だ。目指すべき方向など知る由もない。どうやって迷い込んだかすら分からないのだから。
E-055【横倉裕司】
デコラティヴな動物たちの表層は、さながらネイルアート。自らの肉体だけでは飽き足らず自然の産物まで飾り付けることで、地球の所有権を誇示する人間の傲慢さ!アートはヒトを、神の視点に誘う。
E-056【移動マッサージ】
コミカルな眼差しのキャラたちが、いたずらっ子のように伸び伸びと存在する空間。少年の夢は終わることがない。
E-057【並木亜希子】
野生動物は常日頃、何を考えているのか。ムツゴロウや森本レオにだって分かるとは思えないのだけれど、分かろうとする前に、まずは見つめるべきなのだ。
E-058【高野幸三】
そもそも色彩そのものが生物だったのである。細やかな描線それ自体がキャラクターの本質なのかもしれない。
E-059【水谷まどか】
夜露に光る蝶のリンプンは、娼婦の本音を隠すのにうってつけのコスメ。目ざとく飢えたオオカミに見えるのは、ただの肉体だけ。
E-060【でこ】
スマイルで和む人ばかりではなく、機嫌を損ねる人もいる。「普通」が一番コワいのかもしれない。
E-061【主藤大介】
ドラゴンの皮を一枚剥ぎ取れば、中は普通のマイホームパパ。
E-062【ナカイヒトミ】
少女のグロテスクな部品は、キュートさを増幅させるアクセサリー。生まれながらにしてボディピアスさながらの、それ。
E-063【十番地】
そもそも私の唇は誰のものだったのだろう。まだ見ぬ王子様にあらかじめ奪われていたことに気づく。奇妙な形の単細胞生物だって、実は似たようなものだし。
E-064【ミロコマチコ】
見知らぬ植物も見慣れた動物も、絵に描かれてしまえば、それは作者の心象風景そのもの。
E-065【ASAKOAPA】
オッパイとコンドームは似ている。膨らませてみると、それだけでラヴリー。
E-066【いぐちきよし】
ブタがいっぱい美味しそう? いやいやこんなに喰えやしない。むしろ喰われてしまうだろう。
E-067【黒山塾(山口学+立花満+石山好宏)】
物欲を分解すれば、物理学。それが即ち市場経済。
E-068【atom】
少女とポップアートの取り合わせは余りにお似合いで羨ましいくらい。そこが逆にかわいそうになってくるのはどうしてだろうか。
E-069【佐藤圭】
みんな違う造詣なのに、実は同じキャラに思えてならない。などと一瞥しただけで錯覚するのは、断じてイケナイことだ。
E-070【eimi】
ふてくされたような顔をしているのは、きっと楽しさを隠したいだけなんだろうと、つい意地悪く言ってみたくなる。
E-071【岡部由佳】
いかに脳天をカチ割られようとも、堪えきれない笑い。よほど能天気なのだろう。
E-072【EM】
やることなすこと誠意が感じられない! と怒りたいところだが、あんまり無邪気すぎるので許されてしまう。そんな人への憧れ。
E-073【摩尼】
ぼろきれみたいにズタズタのボディー。それでも自分を好きでいなければ、キボウはない。
E-074【タブチ】
ヘタすぎる字はむしろアート。なんて逆説が通用するのは、無論アートの所以。
E-075【佐藤詳悟】
突然の来訪者はエイリアンだった。とりあえず円に囲んでしまえばコワクない!
E-076【ono takayoshi】
何もない。これもアートか。ジョン・ケージ乙。。。
E-077【ドロノホシ】
元来Tシャツは下着だから、オナニーに丁度良い。
E-078【宮部竜二】
陰影は立体にしか出来ないものだから、平面に描かれたカゲが虚像とは限らない。
E-079【イウラ千サ】
スーパーインフレあるいはハイパーデフレ? ゼロ万円なら印刷する必要はなく、最初から無価値。だったら値段は自分で決めればいいのだ!
E-080【。みちこ。】
食べる←→食べさせる、聴く←→聴かせる、読む←→読ませる。悦びは相対的である。
E-081【岡田元】
秋刀魚のヒラキと絵画のヒラキ。どっちがよりアーティスティック?
E-082【Guriko】
スイーツがなければ、スイーツになればいいじゃない。
E-083【野田純子】
「先輩って何かアートっぽいですね」「そうかな、どの辺が?」「髪型が変なところとか」
E-084【にしだわこ】
巨大な習作と、小さな完成品。万物の生成過程は、大抵そんなもの。
E-085【midori komori】
似たもの同志が集まれば、やっぱり何の進歩もない。だから分裂する。そして着実に進化を遂げているから、やってらんない!
E-086【茂木成美/渡辺よし子】
魚じゃ人になるまいて。
E-087【jennifer natasha geacone-cruz】
あらフシギ! 額に入れれば『作品』death!
E-088【築野友衣子】
何語で書かれた手紙なのか分からないエアメール。誤配されても気づかぬまま、差出人にすら忘れられたフレーズの行方や如何に。
E-089【yohsuke】
今様デコラ。器用さが個性を損なう、世渡りの難しさ。
E-090【The Hut Project】
すわ食べ物かと思いきや、それは私が空腹なだけで。
E-091【島田真井子】
「ハニワ」が生きてたなんて! 冗談キツいぜハニーは、なんちて。
E-092【川上秀行】
最初からいい加減なのはさておいて、途中から更に息切れ。ここまで書いてすっかり疲れ果ててバテ気味なもんで、言葉も出てこない。それでもこれは素晴らしい。アートの何たるかを分かった気にさせてくれる。後でまたちゃんと観たいのだけれど、次の機会はあるのだろうか。