Xamoschi内容紹介

   他のチームの内容がいいので焦ってきました。我々も内容紹介をしようと思います。僕自身は動画を撮ったり2ちゃんねるに出て行ったりしましたが、同人誌自体は正攻法で「場所」に関してガンガン論考しています。かなりハードコアです。


検証「聖地巡礼 観光するオタクたち」 武藤潤X藤田直哉X井上ざもすき

   オタクたちのしている聖地巡礼。彼らはどうしてそのような観光を行い、そしてなぜ「聖なる」場所だと感じているのか? そのような疑問の元、イタリアまで行った聖地巡礼の達人に、観光としての聖地巡礼について率直に話を聞く。考えを変えていくざもすきさんの姿も見所。


特別寄稿 佐藤友哉 ぼくのかんがえたほっかいどうちょうじん

   藤田直哉と隣の隣の市に住んでいた作家、三島賞作家の佐藤友哉さんに、千歳について、北海道について、何もないことについて、エッセイというか、小説というか、強烈な文章をいただきました。ビリビリ来ます! 佐藤ファン必見! 佐藤ファンだけではなく、すべての郊外に住むものに贈る。


インタビュー1 新井素子、練馬を語る

   練馬区に住んでいらっしゃる日本SF大賞受賞作家新井素子さんに、同じく練馬区に住むざもすきさんが、『練馬大好き』の続編のようなトーク。そこから話は、彼女の小説の中心になる生命観やキャラクターや家族の問題へと踏み込んでいく。「生命・家族・キャラクター・場所」を考える、必読のインタビュー。文体にも注目。かなり生き生きとした文章で楽しいです。


インタビュー2 「工場の美」「廃墟の美」を科学する 岡田昌彰氏

   一方で、練馬のような自然のある場所、北海道のような郊外ではなく、工業都市はどうなのだろうか。工業都市の美というものもあるのだろうか。近畿大学准教授の岡田昌彰さんに、「工業の美」「廃墟の美」について伺った。


インタビュー3 「6,660,000,000」 円城塔

   SFと北海道は、何か関係があるのか。抽象的な空間の感覚や、世界感覚などが特異な、SF大賞候補・芥川賞候補作家、円城塔氏に、作品について伺いに行った。インタビュアーの藤田がファンだったために、話は、無限や、神や、笑いや、文学と科学や、全体性、脳科学などの話に広がっていく。円城ファン必読の濃厚インタビュー。濃すぎてすいません!


小説 「1989年の地方都市 五万円の神様」吉田アミ

   地方都市で思春期を過ごすというのはどういう感覚か。傑作『サマースプリング』で「名古屋」での思春期を描いた吉田アミさんに、地方都市の「感覚」を小説の形で表現していただいた。閉塞していて、出口がなくて、電車に乗ればどこかにいけるかもしれないけど…… 五万円があったら何ができるだろうか。しかし、何かができるという希望すら、持てないかもしれない。


論考 ざもすき的「タイムスリップ・コンビナート論」井上ざもすき

   岡田インタビューに呼応する形で、笙野頼子さんのコンビナート文学の傑作「タイムスリップコンビナート」を論考する。論考するために、鶴見線の、海と東芝の工場しかないという海芝浦駅まで行き、そして書いた論考。ちなみに、僕も、趣味で、そこに行きました。本当に工場以外何もない駅でした。ネット化と宗教化を加速させる直前の笙野さんから、「工業都市」に対する「想い」を読み解く。


論考 地球村から村祭りへ―2ちゃんねるに見る日本的ネットコミュニティのありかた― 藤田直哉

   地方都市ではオタクになることもできない――オタクショップもコミュニティもない。ファスト風土しかないのだから。中間共同体もない。出口はネットだけ。そんな生を営んでいる人々はおそらく多くいるだろう。彼らがアクセスして形成するネットコミュニティではどのようなことが起こるのか。「祭り」という宗教性に加速する彼らの行動がどう我々を変化させているのか。「2ch哲学板東浩紀スレッド」への参与観察の報告。


論考 遠心分離機の彼方に グレッグ・イーガン順列都市』の精神性/身体性 海老原豊

   第二回日本SF評論賞優秀賞を獲得された、気鋭のSF評論家海老原さんに、「オタク的な」心性を表すとされる『順列都市』の読解を依頼した。その背景には、身体性を失っているネット空間の問題があった。『順列都市』の中に存在する身体性と精神性の問題を読み解くことで、「バーチャル化」している我々の生のヒントにする。
   

論考 再ヤンキー化再考 〜上京のJポップ・歌謡史〜 速水健朗

   『ケータイ小説的。』で、上京しない「再ヤンキー化」している人々を描いた気鋭のライター速水健朗さんに、Jポップの中の「上京」というモチーフが時代とともにどう変化してきたか分析していただいた。地方人・郊外人がどう変化してきたか。東京にいて、東京人の作り出す文化に属していては見えない別の世界が、ここにはある。作務衣を着ているラーメン屋の増加など、若者が「再ヤンキー化」しているという現象がなぜなのかも考えたい。


論考 佐々木寛太郎 日本のヒップホップ―「現場」とジャンル論の関係から―

   HIPHOPにおいて、地方と都市という対立は大きい。さらに、disや戦いなどで「リアリティ」を生み出す。HIPHOPの「現場」という概念を通じ、その「現場」という場所がどのように文化に寄与して発展させていくのかについての論考。その「現場」は、ネットなどと、HIPHOPカルチャーでは、どのように違うのか。そしてどのような意味を持っているのか。刺激的な論考。


論考 徐福と熊野 松波太郎

   聖地で始まり、聖地で終わる。アニメ・マンガ的な「聖地」に対して、熊野のような「本物」の「聖地」はどうなのか。松波太郎さんが綿密な調査の元、徐福と熊野の伝説、そして信仰について描く。我々は生きていくうえで「場所」や「生の意味」をどう獲得するのか。本物と偽者とは何か。さまざまな示唆を投げかける同人誌を閉じるにふさわしい論文。