表紙について


   我々のチームの表紙はこんな感じなのですが、『恋空』のパクリだろとか言われています。明らかパクリです。というか、北海道関係の資料や写真を漁っていたのですが、圧倒的に空が広いんですね。『恋空』も北海道ですし、セカイ系的な作品で、セカイ系作品と言えば新海誠でありますが、あの平坦な地面と圧倒的な空というイメージはセカイ系の原風景となっています。
   奇しくも東氏の同人誌『美少女ゲームの臨界点』はこんな感じです。

   似ていますね。というか、我々が「セカイ系」のイメージを「利用した」と言うべきでしょうか。セカイ系に定義されることもある佐藤さんに書いていただき、そんな「ピュア」で「美しい」世界が、場所が、現実が、如何にひどいか、惨憺としているか、希望がないか、そんな内容になっているので、僕は「シャッター商店街とか洋服の青山とか廃墟とか潰れたショッピングモールの観覧車とかどうだろう」と提案したら、デザイナーさんの美意識的に許してもらえず、とりあえず美しい風景に包むことになりました。
   圧倒的な空。しかし、地面は傾いている。そしてそれに傷のような汚しまで入れてもらいました。我々があまりオタク系、美少女系に走らず、そのようなものを消費する人々の背後の「場所」自体を見ようとしている意図を見事に汲んでくださったいい表紙だと思っております。清家愛さま、ありがとうございました。
   他、没になった表紙アイデアとして、真っ白の背景に我々二人が立っている、というのですが、没でよかったです。もうひとつは、xamoschiという文字が、別の世界への鍵穴になっているというものでしたが、「多分、これはそこまで希望のある本ではない」という僕の判断で却下させていただきました。
   本当に、希望はないかもしれない。だが、ここには、救いを、生の意味を求めて、もがく人々の姿なら、収録されているかもしれない。傾いた地面で傷だらけになりながら何かを探している人々の姿ならあるかもしれない。私たちが作ったのは、そういう本です。